NTT DATA + クアルトリクス
NTT DATA + クアルトリクス
世界20万人の本音を「共通のものさし」で見える化。 人財・組織力の最大化を目指すNTTDATAの挑戦
(本事例は2025年10月開催のQualtrics EX Conference 講演からの書き起こしとなります。)
NTT Data
海外売上比率は60%超、従業員の4分の3が海外人財というグローバル企業へと変貌しているNTTDATA。同社は、グループ内で混在していた調査手法を刷新し20万人を測る「共通のものさし」として、それまで国内で活用していたクアルトリクスを海外へも導入し、調査手法・プラットフォームを統一することに成功しました。
「Qualtrics EX Conference 2025」に登壇した人事本部の土佐知志氏と前川香音氏は、導入初年度にして「調査終了後1か月での現場公開」や「優先課題の特定」を実現するなど数々の成果を発表し、大きな注目を集めました。
導入背景:ビジネスモデルの転換と「人財」への投資
まず登壇した土佐氏は、NTT DATAを取り巻く現状を語りました。
「急速にグローバル化が進み、従業員約20万人のうち国内は5万人。いまや多数が海外人財です。競争環境も激化しており、従来のSI事業からの脱却が急務です。これから伸びる技術やサービスを見極める先見性と、顧客が価値を感じるアセット(資産)化を重視する高付加価値ビジネスへの変革が求められています」
こうした新しい価値を生み出すのは、機械ではなく「人財」であると土佐氏は強調しました。従業員エンゲージメント(会社への愛着心や貢献意欲)を高め、力を最大限発揮できる環境づくり(Be the place where people grow)こそ、経営上の最重要課題だといいます。
「ITサービスにおいて、現在、NTT DATAは世界でもトップクラスであると自負しています。ですが、エンゲージメントが低い状態では、せっかく戦力化した従業員が離職してしまったり、いわゆる『静かな退職』のように力を発揮しきれないまま在籍したりするリスクがあります。年1回の調査を実施するだけでは意味がありません。把握することが目的ではなく、入社から退職までの従業員体験(EX)全体を通じてエンゲージメントを高め、改善サイクルを回していくことが重要です。そのための基盤として、クアルトリクスの導入を決めたのです」
選定理由:3つのツールが混在するカオスからの脱却
NTT DATAが直面していたのは、「組織の状態が正しく見えない」という悩みでした。続いて登壇した前川氏によると、導入以前、同社のエンゲージメント調査は決して効率的な状態ではなかったそうです。
「グループ会社が増えたことで、社内には国内・海外あわせて3つの異なる調査ツールが混在していました。データが点在するだけでなく、エンゲージメントスコアの定義や設計思想も異なってしまい、グループ全体の従業員体験(EX)の状態を一元的に把握することが非常に困難でした。そこで、人財・組織力の最大化をグループ全体で推進するために、全世界約20万人の状態を測る『共通のものさし』として、クアルトリクスの導入を決定したのです」
数あるツールの中で、なぜクアルトリクスを選んだのか。前川氏はその理由を明確に3点挙げました。
「1つ目が、グローバル運用に耐えうる機能を多数備えていること。2つ目は、多くのグローバル企業で採用されており、競合他社のスコアをベンチマークとして取得できること。3つ目が、国内ですでに導入実績があり、手応えを感じていたことです」
導入過程:劇的に変わったスピードと納得感
導入プロジェクトは2024年度、海外拠点の約14万人を対象に実施されました。特筆すべきは、そのスピード感です。
「特にうれしかった成果は、調査終了から約1か月で事業部門やHRBP(人事ビジネスパートナー)へ結果公開を開始できた点です。調査から公開までのスピードが速ければ、それだけ迅速な分析と課題解決のアクションにつなげられます。1年目にしてこのスピード感で実施できたのは大きな収穫でした」
そして前川氏は、導入プロジェクト推進における3つの重要なポイントを、次のように振り返りました。
「特に注力した点として、まず1つ目がデータプライバシー対応です。グローバルの従業員に対し、日本本社が主体となって調査を行うため、各国の法規制や慣習の違いに対応する必要がありました。社内の法務だけでなく、社外の専門家の意見も仰ぎながらリスク対策を行いました。2つ目が、各拠点との合意形成。各拠点のリードメンバーと議論を重ね、既存の調査の良さを取り入れつつ枠組みを決めました。それにより、彼らが納得感を持って推進してくれ、継続的な運用につながっています。そして3つ目が、教育機会の提供です。クアルトリクスを使いこなしてもらうため、直感的なダッシュボードのデザインを工夫したり、勉強会を設けたりして、継続的なフォローを行っています」
導入成果:「共通のものさし」がもたらした3つの成果
クアルトリクスを導入したことで、NTTDATAは何を得たのでしょうか。前川氏は、統合によって得られた具体的な3つの成果と、分析の深化について次のように語ります。
成果1: グローバル全体でのスコア定義の統一と可視化
1つ目の成果は、グループ全体で「エンゲージメントとは何か」という定義を可視化できたことです(下図)。
「グループ全体で調査設計をし直したことによって、エンゲージメントスコアの定義を統一することができました。クアルトリクス社のメソドロジー(方法論)に倣って設計したことで、単にスコアが出るだけでなく、『どの要素がエンゲージメントにどの程度影響を与えているか』という構造的な情報も得られるようになりました」
成果2 : 優先課題を特定し、「何から手をつけるべきか」が自動でわかる
2つ目の成果は、得られた膨大なデータの中から「今、何に取り組むべきか」という優先順位が明確になったことです。前川氏は「キードライバー分析」という手法の有効性を挙げます。
「下図のように、膨大なデータの中から『何が社員の満足度に一番影響しているのか』を自動で計算し、優先順位をつけてくれるようになりました。このキードライバー分析を活用すると、横軸に各項目のスコア、縦軸にエンゲージメントとの相関をとることで、グループ全体の従業員体験(EX)における『強み』と『弱み』が一元的に可視化されます。これにより、『どこから真因分析や深掘りを進めていけばいいのか』という、課題解決に向けた優先順位が非常に付けやすくなりました」
成果3 : 属性別の比較と、ナレッジの横展開が可能になった
3つ目の成果は、組織や属性ごとの詳細な比較が可能になった点です(下図)。これは単に「スコアが低い組織」を見つけるためではなく、「良い組織」の知見を広めるために活用されています。
「今回の調査をきっかけに、年齢のレンジや職位、組織階層といった属性情報の整備をグループ全体で進めました。これにより、『特定の属性グループで突出してスコアが高い(あるいは低い)』といった傾向が見えるようになりました。重要なのは、単に低いところを見つけるだけではありません。高いスコアを示している組織があれば、そこに蓄積されたナレッジ、つまり成果につながる取り組みや知見を他の組織へ展開し、グループ全体のパフォーマンス向上につなげていくことができる。そうした前向きな活用が可能になった点も、大きな成果です」
前川氏は、クアルトリクスの大きなメリットである「ベンチマーク機能」の活用方法についても次のように話します。
「グローバルで調査を行うと、国や文化によって回答傾向が違うので、横並びの比較は意味がないのではないかという議論が起こります。しかし、各拠点の回答傾向が初めてわかったこと自体が一つの収穫でした。クアルトリクスの機能では、国・地域別のベンチマークを取ることができるので、絶対値を比べるのではなく乖離を見ていくことで、対話の糸口にすることができます。データそのものの数字というよりは、データをきっかけにして『どういう対話をしていくか』という点にこそ、このツールの意味があると考えています」
展望:従業員の声をもとに「対話し、行動する」組織へ
最後に前川氏は、プロジェクトが目指す未来の姿について語りました。データの分析はあくまで手段であり、最終的なゴールは組織の行動変容にあります。
「今回の導入によって、『従業員の声を聞き、分析する』というフェーズまでは柔軟にできるようになりました。今後はさらに一歩進んで、『対話し、アクションを起こす』というサイクルを回していきたいと考えています。経営幹部はもちろんですが、現場レベルも含めた社内のあらゆるレイヤーでこのサイクルが回る仕組みをつくっていくのが、我々グローバルヘッドクォーター(本社)の役割です。エンゲージメント調査を共通言語として、ベストプラクティスを共有し合ったり、至る所で対話が生まれたりするようなカルチャーをつくっていきたい。そこを目指して動き始めています」
NTTDATAの事例は、エンゲージメント調査が「人事のための調査」ではなく、「現場の対話を生み出し、組織力を最大化するための経営ツール」であることを示しています。3つの異なるツールが混在していた状態から、クアルトリクスという「共通のものさし」を手に入れたことで、同社はグローバル20万人の声を聞き、分析し、そして行動に移すための強力な基盤を築きました。
「Be the place where people grow(人が成長する場所であれ)」――次期中期経営計画に向けたこの言葉のとおり、データと対話を武器にした同社の組織変革は、ますます加速していきます。