ターゲット顧客が実際に商品を体験し、ブランドが約束する価値を信じ、「買いたい、そしてもう一度買いたい」と思えるほどポジティブなブランド認知を持つようになるまで、ブランドは成長しません。
ブランドが顧客の期待に応える、あるいは期待を上回る体験を提供できれば、長期的な顧客ロイヤルティと強いブランドエクイティを築く可能性があります。
平均的な人は、1日に最大10,000件ものブランドメッセージを受け取っていると言われています。
そのため、競争の激しい市場で顧客の印象に残るためには、ブランドメッセージを他社より目立たせることが重要です。
ブランド認知とは?
ブランド認知とは、顧客が商品やサービスについてどのようなイメージを持ち、それによってどのような感情を抱くのかを指します。これは、ブランドを所有する企業が「自社ブランドはこういうものだ」と発信している内容とは必ずしも同じではありません。ブランド認知は、実際の商品の利用、顧客体験、機能性、評判、口コミなどを通して形成されます。それはSNSなどのオンライン上だけでなく、対面での会話や口コミからも生まれます。
顧客が商品を購入したり、オンラインレビューを読んだり、友人と商品についての体験を比較したり、企業の従業員と話したりするたびに、そのブランドについて何らかの判断をしています。企業は、顧客に対してどのようなブランドメッセージを、どのような方法で届けるのかをコントロールすることができます。そのためには、自社のビジョン、ミッション、企業文化を表現し、顧客とのつながりを生み出すようなブランドパーソナリティを慎重に作り上げることが重要です。
顧客の記憶に残るブランド認知を作りたいのであれば、企業の個性を顧客の五感すべてにつなげてみるのも1つの方法です。五感に訴えかけることで、顧客の感覚や感情に強く響き、長く残る印象を与えることができます。
具体的には、以下のような方法があります。
- 視覚(Visual):一目で認識できるロゴ(Coca-Cola、McDonald’s、Disney(ミッキーマウス)、Cadbury、PG Tips)や、予算をかけた印象的で楽しめるテレビCMなど。
- 聴覚(Auditory):耳に残る音楽のジングル(Intel)や、キャッチフレーズなど。特に、少しベタで、つい口ずさんでしまうようなフレーズは、ポップカルチャーの中に定着することもあります。たとえば、Kit Katの「Give Me a Break!」などです。
- 嗅覚(Olfactory):香りには、記憶や感情を呼び起こす強い力があります。たとえば、カフェからベーコンを焼いている香りを店の外へ漂わせるようなシンプルな方法から、航空会社が機内やおしぼり、客室乗務員などに独自の香りを使用し、ブランド体験を高めるような方法まであります。
- 味覚(Taste):無料サンプルや、新商品を試してもらうための特別オファーなど。
- 感情(Emotional):クリスマスシーズンに放映される、思わず感情を揺さぶられるテレビCM(John Lewis、Marks & Spencer、Sainsbury’s)など。
ブランド認知調査(Brand Perception Survey)を活用することで、顧客、見込み顧客、従業員、その他のステークホルダーが、自社ブランドをどのように捉えているのかを理解することができます。
なぜブランド認知は重要なのか?
ポジティブなブランド認知を持ってもらうことは、成功への近道です。顧客があなたのブランドを信頼していれば、商品を購入する際にも、より自信を持って意思決定できるようになります。また、他社からパートナーとして興味を持ってもらいやすくなり、新しい商品やサービスを市場に投入することも容易になります。
ブランド認知に取り組む最終的な目的は、ブランド価値(Brand Value)とブランドエクイティ(Brand Equity)を高めることです。ブランドエクイティとは、一般的な商品と比較して、認知度の高いブランド名を持つ商品が生み出す追加的な価値のことです。企業にとっては、高いブランドエクイティを築くことが重要です。
顧客が購入を検討するときに、「このブランドなら安心できる」と感じ、自信を持って購入を決められる状態を作ることが目標です。その結果、ブランドエクイティの高い商品は、同等の一般的な商品より価格が高かったとしても、顧客から選ばれやすくなります。
ブランド認知を測定する方法
ブランド認知は、定期的に測定し、時間の経過とともに比較し、どのような要因が改善につながっているのかを把握することが重要です。顧客が自社ブランドをどのように捉えているのかを測定する方法はいくつかあります。
ブランド・フォーカスグループとフォーラム
少し昔ながらの方法に感じるかもしれませんが、今でも効果的な方法です。少人数の顧客を集め、対面またはオンラインで話を聞くことで、実際にブランドを利用している人から、ブランドについての良い点と悪い点を直接聞くことができます。顧客がブランドについてどのように感じているのかを把握し、何がうまくいっていて、何を改善する必要があるのかをより深く理解できます。特に、オンラインブランドフォーラムは、複雑なサプライチェーンを持つビジネスで役立ちます。
たとえばB2B2Cのビジネスでは、メーカーが販売代理店や小売業者を通じて商品を販売しているため、最終的な顧客に直接アクセスすることが難しい場合があります。このような場合、オンラインフォーラムを通じて顧客の声を集めることで、こうした情報のギャップを埋めることができます。さらに、その情報を商品開発に活用し、ブランドをより強化することにもつながります。
ブランド認知調査
アンケート調査を行うことで、顧客がどのような人なのか、そして自社ブランドについてどう考えているのかを理解できます。アンケートは比較的簡単に実施できるため、ブランドについて良い意見を持っている顧客だけでなく、不満や改善点を感じている顧客からも率直な意見を集めることができます。
また、自由記述欄を設けることで、顧客が感じていることを自分の言葉で伝えてもらうこともできます。さらに、NPS(Net Promoter Score)やCSAT(Customer Satisfaction)などの信頼性のある指標を使って、必要なデータを収集することもできます。ブランド認知調査は、少なくとも四半期に1回程度実施することが重要です。また、広告キャンペーンの実施頻度に合わせて調査を行い、広告活動がブランド認知にどのような影響を与えているのかを追跡する方法もあります。
ソーシャルメディアをモニタリングする
人々はソーシャルメディアでは、ブランドについて率直な意見を発信することが多いため、Facebook、X(旧Twitter)、LinkedIn、Instagramなどで、自社ブランドに関する言及や反応を追跡することが重要です。ソーシャルメディア上のデータは、自社のソーシャルメディア戦略がどの程度機能しているのかを知るための重要な情報源になります。人々が自社ブランドについて何を話しているのかを把握できれば、迅速に対応し、ソーシャル上でのブランドの存在感をより早く高めることができます。優れたツールには、ブランドのソーシャルメディア上の存在感を一元管理できるダッシュボードがあり、以下のようなインサイトを確認できます。
- どのソーシャルメディアがブランドの成長に最も、または最も少なく貢献しているのか
- 最も多く閲覧されているコンテンツの種類
- ブランドへの言及や紹介の数(リアルタイムで確認できる場合もあります)
- レビューやコメント
- インフルエンサーのリーチ
- 滞在時間(ユーザーがブランドのコンテンツを見ている時間)
- どの有料コンテンツが最も高い成果を上げているのか
ブランドの独自性を測定する
どのブランドも、質の高い商品や優れたカスタマーサービスを提供することで、競争をリードしたいと考えています。では、あなたのブランドを他社と違うものにしているのは何でしょうか?ここで重要になるのが、自由記述による顧客フィードバックです。顧客はブランドについて感じていることを、自分自身の言葉で自由に書くことができます。そして、適切な分析ソフトウェアを使えば、その言葉を分析し、トピックごとに分類することで、顧客がブランドに対して持っている最も強いイメージや関連性を特定できます。これにより、顧客が自社ブランドについてどのような意見を持っているのかを、継続的に追跡できるようになります。
ブランド認知を改善するために、インサイトをどう活用するか
ブランドを改めて見直す
ブランド認知に関する調査結果から、現在のブランドがうまく機能していないことが分かった場合は、ブランドをリフレッシュすることを検討できます。ブランドを新しく見直すことで、消費者から見たブランドイメージを再び高めることができます。たとえば、Mastercardは少し前に、1960年代から使用していたロゴを現代的なデザインへと変更しました。デザインスタジオのPentagramは、Mastercardが持つシンプルさ、つながり、そしてスムーズさを強調するデザインを採用しました。新しいカラーパレットは、さまざまな背景の上で明るく輝いて見えるデザインになっています。
適切なリーダーを配置する
ブランド認知を変えていくためには、そのビジョンを共有し、積極的に取り組む経営陣が必要です。ブランド認知を変えることは、時間やリソースを必要とする大きなプロセスになる場合があります。そのため、最初の段階から経営陣の理解と支持を得ることが重要です。また、データダッシュボードなどを活用して、リーダー自身が自分たちの取り組みがリアルタイムでどのような変化を生み出しているのかを確認できるようにしましょう。
顧客に聞く
顧客が自社ブランドをどう認識しているのかを、企業側が一方的に決めることはできません。顧客自身に聞く必要があります。顧客フィードバックアンケートを実施して分析するだけでなく、従業員にも顧客と自然な会話をすること、そして顧客の話を本当に聞くことを意識してもらいましょう。そのうえで、顧客から得た意見やフィードバックを社内に共有します。
従業員に聞く
従業員は、ブランドの商品やサービスを作り、販売し、マーケティングし、管理している人たちです。そのため、ブランド認知について意見を集め、社内に伝える役割を担うのに、これほど適した人たちはいません。ブランド認知を変えていく際には、部署に関係なく、できるだけ多くの従業員の意見を取り入れることが重要です。匿名で投稿できるオンライン提案ボックスなどを活用すれば、従業員から率直なアイデアや意見を集めることもできます。無料の従業員向けオンライン提案ボックスのテンプレートを活用して、まずは始めてみましょう。
コンテンツを中心に進める
ブランドのターゲットオーディエンスを明確にしたら、次はその顧客に適したコンテンツを届けることが重要です。Webサイト、ブログ、SNSなどのチャネルが、ブランドのメッセージをしっかり反映していることを確認しましょう。また、できるだけ多くの人にブランドメッセージを届けられるように、コンテンツを適切に最適化することも大切です。
将来のチャンスにも目を向ける
世界は急速に変化しており、ビジネスでは既存の市場やビジネスモデルを大きく変えるような動きが起こることも予想されます。そのため、これまでブランドの中心だった領域だけにとどまらず、新しい分野へ展開する準備をしておくことが重要です。これからブランドにとって成長分野となる領域は、最初に考えていたものとは違うかもしれません。だからこそ、常に新しい可能性やチャンスに目を向けることが大切です。
ブランド認知を変えたブランドの例
Volvo
スウェーデンの自動車ブランドであるVolvoは、安全性と優れた品質の象徴として知られています。しかし、車のやや角ばったデザインによって、消費者の間では「地味な車」「堅実で、あまり冒険をしない人が乗る車」というネガティブなイメージを持たれることもありました。
2000年代初頭から、Volvoはブランドイメージを大きく変えていきました。品質、安全性、環境への配慮というブランドの中核的な価値は維持しながら、ミニマルで洗練された、北欧らしいスタイリッシュなデザインを取り入れました。その結果、Volvoに対するブランド認知は、「地味なブランド」から「プレミアムブランド」へと変化していきました。
Burberry
イギリスのデザイナーズウェアブランドであるBurberryは、黒・ベージュ・赤を使った特徴的なチェック柄の裏地を持つトレンチコートで有名です。約50年前、Burberryのブランドイメージは、次第に「野暮ったい」「古くさい」といった印象や、あまり好ましくない若者文化と結びつき始めていました。そこで、クリエイティブディレクターのChristopher Baileyは、現代的でありながらクラシックな英国らしさを求める顧客に合うようにデザインを刷新しました。
さらに、人気があり、ファッションにも敏感な女優Emma Watsonをブランドの顔として起用するなど、積極的なブランド戦略を展開しました。その結果、Burberryに対するブランド認知は大きく変化し、顧客の中に洗練され、プロフェッショナルで、現代的なブランドという新しい印象を生み出すことにつながりました。
McDonald’s
2004年のドキュメンタリー映画『Super Size Me』によって、世界的な大手ファストフードブランドであるMcDonald’sの食品を食べることによる健康への懸念が注目されるようになりました。当時は、McDonald’sが使用する肉の原産地や調達先に関する透明性の不足についても、懸念が高まっていました。こうした状況は、健康を意識する顧客やファミリー層に対して、ネガティブなブランド認知を生み出しました。McDonald’sは、サラダやフルーツなどのよりヘルシーな食品の選択肢を提供することで、ブランド認知の改善に取り組みました。また、ブランドイメージをファミリーや若いカップルに向けて展開しました。
さらに、使用している肉がどこから来ているのかを明らかにする、透明性を重視したブランドキャンペーンも実施しました。こうした具体的な情報や取り組みを示すことで、顧客の認識を変えるための根拠を提供し、ポジティブなブランドエクイティを築くことにつながりました。