カスタマーサービスの未来:AIと人間、2つのチャネルのパフォーマンスをいかに評価し、改善するか

Jun 18, 2026

7,000人以上の消費者を対象とした最新の調査によって、問題解決に最も必要なのは「理解力」であることが明らかになりました。しかしAIエージェントが最も低い評価を受けたのも、まさにこの「理解力」という点でした。

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銀行の担当者と握手する顧客

多くの企業がこれまで以上に顧客対応をAIエージェントに委ねるようになり、業務効率化の成果は着実に上がっています。しかしその一方で、顧客の体験満足度は期待を大きく下回っています。クアルトリクスが実施した最新の消費者トレンドレポートによると、AIによるカスタマーサービスは利便性、時間の短縮、有用性といった主要な指標のすべてにおいて評価が低く、AIのあらゆる活用事例の中で顧客の不満が最も高くなっています。

AIファーストの時代においては、顧客体験が企業の成否を左右します。こうした変化に企業が適応できるよう、クアルトリクスは7か国、7つの業界において7,000人以上の消費者を対象に、直近のカスタマーサービス利用体験に関する調査を実施しました。その結果、AIエージェントは「親しみやすさ」では高い評価を得ているものの、問題解決において不可欠な「理解力」に大きな課題があることが明らかになりました。

このような実態を定量的に分析・評価するため、クアルトリクスは「Agent Performance Framework(AP3)」を開発しました。このフレームワークでは、人間のオペレーターとAIエージェントの双方を対象に、「親しみやすさ」「知識」「理解力」という3つの行動指標を追跡調査しています。 

問題を理解できなければ、顧客満足度は低下する

問題が解決されないまま終わった場合、カスタマーサービスの満足度は2.83(5点満点中)まで低下し、顧客との信頼関係そのものを破綻させるリスク 

に直面します。では、問題が解決されない最大の要因とは何でしょうか?それは、「理解不足」です。そしてこれは、人間のオペレーターだけでなく、AIエージェントにも同じことが言えます。 

問題を解決できなかった場合、消費者からの「理解力」への評価は4.44から2.78へと37%も低下します。これは「知識」(34%減)や「親しみやすさ」(20%減)と比べても最も大きな落ち込みです。 

親しみやすく知識豊富なエージェントであっても、目の前の問題を理解しなければ解決には至りません。そして未解決のまま残された問題は、顧客離れ、苦情の増加、再問い合わせの発生など、ビジネスにおける損失へと直結します。


「AIが背景や状況を理解できなければ、問題を解決するどころか、かえって悪化させるおそれがあります。理解不足によって解決に至らない場合、顧客満足度は急激に低下します」

AIは「親しみやすさ」では最高評価だが、「理解力」では最低評価

今回の調査では、すべてのチャネルと消費者層で、カスタマーサービスの対応が「知識」(4.17)や「理解力」(4.16)より「親しみやすさ」(4.36)の項目で高い評価を受けました。その差が最も顕著に現れたのがAIです。

AIによる対応は、調査対象となった全チャネルの中でもSNSと並んで「親しみやすさ」のスコアが4.41と最も高い評価を獲得しました。しかしその反面、顧客の問題を把握できていたかどうかを示す「理解力」のスコアは4.08と低迷しています。

AIにおける「親しみやすさ」と「理解力」の差は0.33ポイントに達し、これは今回測定した要素の中で最も大きな開きとなりました。


「AIエージェントは丁寧な対応ができるかもしれません。しかし今回の調査で分かったのは、顧客体験から有意義な成果を生み出すために必要な背景や状況の理解力が不足しているということです」 

— レオニー・ブラウン、クアルトリクスラボ責任者

ここで企業にとって喫緊の課題となるのは、AIエージェントの対応に問題があった場合、人間の対応時よりも顧客の離脱や不満が深刻化しやすいという点です。これは、顧客が人間とAIに期待する暗黙の前提が根本的に異なるためです。 

人間の担当者が見せる親しみやすさは誠意として受け取られます。しかし、顧客の問題を理解できていないAIエージェントが丁寧な言葉遣いをしても、顧客には上辺だけで不誠実だと受け取られ、かえって顧客の不満を募らせることになります。

若年層ほど理解力に対する目が厳しく、妥協しない

今回のデータによると、「理解力」に対する満足度は年齢による差が最も大きく、年齢が高くなるほど評価が高く、若い層ほど厳しく評価する傾向が見られました。つまり、AIチャネルを日常的に利用する若年層ほど、「理解力」の面で満足させるのが最も難しいということです。 

若年層は、自分の話に耳を傾けてもらうことへの期待値が高く、マニュアルどおりの対応に対する許容度も低いのが特徴です。今後、これらの世代が主要な顧客層になっていく以上、「理解力」の問題が自然に解消されることはありません。質の低い顧客体験をいち早く特定し、改善し続ける姿勢こそが、顧客に選ばれ続けるためにますます重要になるでしょう。

AIの導入を急速に進めている業界が、成果を出せているとは限らない

業界別のスコアを見ると、AI活用で成果を左右するのは導入の早さではなく、顧客の状況や文脈に対する理解力であることがわかります。実際、AIエージェントを積極的に導入している業界ほど、パフォーマンスで後れを取っているという皮肉な結果が示されました。例えば通信業界は「理解力」への評価が4.05で最も低く、小売業界は総合的な顧客満足度(CSAT)が4.07で最下位となりました。

一方、最も高い評価を得たのは保険業界(医療保険を除く)です。「親しみやすさ」(4.55)、「知識」(4.42)、「理解力」(4.40)のすべての指標で最高スコアを記録し、調査対象となった全業界の中でトップとなりました。これに続いたのが、2位の旅行・ホスピタリティ業界です。

AIエージェントと人間のオペレーターが提供する体験を改善する方法

今回の調査結果をふまえ、カスタマーサービスにおけるAIの導入や活用拡大を検討している体験管理の責任者が、投資対効果を確実に得るために今すぐ取り組むべき4つの優先課題をご紹介します。

  • 過去の利用体験、嗜好、購入履歴などの背景情報をAIエージェントに学習させ、一人ひとりに合わせて個別最適化された解決策を提供できるようにしましょう。 

    AIエージェントを一次窓口して配置すれば、顧客の声に耳を傾けながらサービスコストを削減できたように感じるかもしれません。しかし、AIに顧客を理解する力が欠けていれば、顧客ロイヤルティやリピート購入の基盤となる顧客満足度は著しく低下してしまいます。
  • コンテインメント(AIが人間の手を借りずに対応を完了した割合)だけを追うのは危険です。なぜなら、コンテインメントはAIが対応を処理したかを示すだけで、適切な対応ができたかまではわかりません。対応の実態を把握するには、特に、理解力と問題解決率といったエージェントの対応品質を示す指標を評価基準に含める必要があります。
  • 顧客からの問い合わせをチャットボットやFAQなどのセルフサービスに誘導して終わりにせず、人間のオペレーターへのスムーズな引き継ぎまで考慮した設計を行いましょう。これからのカスタマーサービスには、AIと人間との高度な連携が求められます。顧客が何度も同じ説明せずにすむよう、AIから人間へ背景や状況に関する情報を確実に引き継ぐ仕組みを構築してください。この引き継ぎそのものを、顧客体験の成否を左右する重要な指標として評価するべきでしょう。
  • AIエージェントの導入後も、対応品質を継続的に評価しましょう。一度導入したら終わりではありません。問い合わせの内容も変化し、顧客の期待値も変わるため、四半期ごとのレビューでは変化のスピードについていけず、対応品質が低下することもあります。変化に合わせて迅速な改善を重ねられる企業の方が、いち早く導入しただけで安心している企業より優れた成果を上げるでしょう。

レオニー・ブラウンはクアルトリクスラボの責任者として、顧客体験や従業員体験の最新手法に関する調査を統括しています。

本記事で引用したデータは、Qualtrics 2026 Agent Effectiveness Benchmark Studyに基づいています。同調査は、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、メキシコ、英国、米国の7か国に居住する7,001人の消費者を対象に、金融、保険(医療保険を除く)、地方自治体・政府機関、小売、通信、旅行・ホスピタリティ、公益事業の7業界について2025年12月~2026年1月に実施しました。

顧客体験のベンチマーキングガイド

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